●良好な基礎体温は良好なホルモンの状態を表します。
鍼灸治療は、ホルモンの働きを改善する事により卵子・卵胞の成長を助けます。
また鍼灸治療はより良い卵子・卵胞の成長と、排卵、その後の黄体の働きを助けます。
黄体の感受性が高くなる子宮の状態を目指します。
以上で鍼灸治療を継続していると、基礎体温が綺麗な2層性になります。
また、基礎体温の状態で、東洋医学的な『証』を判断できます。治療の参考になりますので、記録していればぜひお持ちください。
実際の治療例と基礎体温
●症例1 35歳女性
主 訴 : 不妊症(不妊歴5年 人工授精4回 体外授精3回)、生理不順、生理痛、冷え性
結 果 : 2年4ヶ月治療し、自然に妊娠され女児を出産されました。
基礎体温から得られる情報から基礎体温の1のあたりで排卵があったのだろうと思われますが、続く高温期が7日くらいと短く、黄体機能の弱さが疑われました。
また高温期に入ってすぐに2や4のような体温の降下が見られ、これはあまり質のよくない卵子を排卵しているためだろうと思われます。
3のところでは無排卵も疑われ、月経もありません。
生理痛(主に下腹部痛、腰痛)も大変ひどく、月経が始まる前の日から一日目は、痛み止めの薬を服用して仕事を休んで寝ている、とのことでした。
この患者さんは10月のはじめくらいから週に一回の鍼灸治療と、自宅でのお灸を開始しました。
翌年1月~3月までの基礎体温表です。
高温期への体温の上昇と、高温期の日数に徐々に改善が見られます。
また苦痛であった生理痛も、薬の服用をしなくても良くなり、寝込むこともなくなりました。
その後、体外授精による治療を再開し始めたころに無事に自然妊娠され、月満ちて元気な女の子を出産されました。
●症例2 38歳女性
主 訴 : 不妊症(不妊歴7年、人工授精5回)、肩こり、冷え性
結 果 : 鍼灸治療開始約1年で妊娠
ちょっとだけ見ると、体温の2層性も見られますので、それほど悪そうにも見えませんが、1の高温期では途中で急激な体温の降下があります。
また2では長すぎる低温期があります。
この患者さんは、病院での不妊治療も受けられています。クロミフェン製剤(クロミッドなど)による卵巣刺激と、HCGの注射による排卵誘発を行い、数年という長い期間タイミング~人工授精を行ってきたそうです。また薬物による卵巣刺激がないと、2のような長い低温期が続くようになるそうです。
年齢的にも卵巣や子宮、また様々なホルモンの分泌も狂いがちで、冷えや肩こりも大変辛く、患者さんの意向で数ヶ月病院での治療を休んで鍼灸治療を行いました。
鍼灸治療開始後6ヶ月くらいの基礎体温です。
薬物は一切使用しなくとも、低温期が短縮し、また1<2<3と次第に高温期も良好な状態になってきました。
さらに治療を続け自然妊娠を目指しますが、なかなかいい結果が出ないので、鍼灸治療を続けながら人工授精(AIH)を行うことにしました。
その結果、1回目(通算6回目)の人工授精でご懐妊となり、無事女児を出産されました。
以上のように、基礎体温の変化から婦人科疾患、特に不妊症に対する鍼灸治療の効果を見てみました。
多くのケースでは、鍼灸治療を行いながら自宅でのお灸を行うと3~8ヶ月で基礎体温上で良好な経過を得ることが出来ます。