[ HOME ] 最初のページに戻る

第31回東北鍼灸学会発表演題
 

潰瘍性大腸炎に対する鍼灸治療の一症例

福島  三瓶 真一   

【序論】    昭和62年に発症し、入院歴が3回ある難治性の潰瘍性大腸炎に対し 鍼灸治療を行い良好な結果が得られたので報告する。

【症例】  49才 女性 自営業(酒店経営)
   初診 平成6年4月28日
   主訴 一日数回に及ぶ粘血便 昜疲労感 倦怠感

治療期間 平成6年4月28日〜平成9年3月25日(1063日 治療回数97回)


【現病歴】

 昭和62年ごろ血便を伴う軟便が始まり,A総合病院を受診し潰瘍性 大腸炎と診断され、2週間ほど入院しほぼ緩解して退院した。平成3年11月に 再発しA総合病院へ40日ほど入院をしたが軽快せず、平成3年12月9日にB病 院を紹介されて入院した。入院中はプレドニンやサラゾピリンなどの西洋薬を 高濃度に用いて内科的な治療を行ったが、あまり変化はなかった。

  平成4年1月ごろより中心静脈栄養法(IVH)による点滴にて1ヶ月の絶 食を行って大腸内の安静を保って治療したが著変はしなかった。それでも翌平成 4年4月5日にはそれまでの内科的治療が効を奏し、緩解まで至らないものの日 常の生活ができる程度に軽快したので退院した。

その後外来にて通院していたが薬の効果がそれ以上見られず、満月様顔貌など の副作用などが目立ち始めたため、医師と相談の上服用していた西洋薬のうちプ レドニンを徐々に減らして、B病院を退院後約1年で中止した。西洋薬のうち、 貧血の改善のためにもらっていた薬だけは鍼灸治療開始後も時々のんでいた(い つ中止したのかは不明である)。

 平成6年6月に主治医がC総合病院に転勤したため、本症例もC総合病院に転 院し、現在は特に悪くなければ3か月に1度位しか通院していない。

 現在は午前中だけで3〜5回、正午〜就寝前までで3〜5回も泥状の粘血便を 排便する。特に疲れていて調子が悪いと夜間就寝中も便意のために2回ほど目が 覚める時があり、よく眠ることができない事がある。貧血もあるため、非常に疲 れやすく常に倦怠感を感じる。仕事は自営業で酒店を営み主に店番をしているが、 立っているのが辛く、客足が途絶えるとすぐに横になって休んでしまうし、特に 調子の悪いときは店を閉めて一日中横になっている。食欲はあまり無いが普通に 食べられ、貧血に効くように鉄分の多く含んだものを選んでなるべく多く食べる ようにしている。腹痛や腹部の膨満感・体重の減少・嘔気や嘔吐などはない。

 この病気以外に特に病気で医療機関に受診したことはないが、潰瘍性大腸炎に よる今回の主訴のほかに常に首・肩が凝り、これだけでも日常の生活に苦痛を感 じる。ときに頭痛や腰痛(完全な運動時痛)が起きる。たばこやアルコ−ルは嗜 好しない。


【既往歴】 特記すべきものなし

【家族歴】 特記すべきものなし


▲ はじめに戻る

【診察所見】

 顔色はやや青白く、眼瞼結膜も赤みが少なく貧血を思わせる。腹部 に腫瘤や反動性疼痛、筋性防御はない。体温は正常で35.8度。脈拍数78/分、脈 状は浮・やや数・虚である。頸部・腋窩・鼠頸部のリンパ節に腫張は認められな い。

 頚椎の運動により肩の凝り感は増悪しないが、頸部より肩甲上部・腰背部にかけ て筋の硬結が見られ、天柱 風池 六頚 肩井 大杼 心兪 身柱 腎兪 十七 椎などには著明な圧痛が認められた。手・足を触診すると、孔最 曲池 陰陵泉 などに圧痛を伴う硬結が見られ、腹部では左腹結 左大巨、石門に圧痛が見られ た。


【要約】
 本症例は病院からの薬を一切飲まなくても完全ではないが一応の日常の 生活は可能であるので、鍼灸治療によって愁訴の軽快する可能性はあると考えら れた。また、本症例には潰瘍性大腸炎による粘血便などの症状以外に肩こりや腰 痛 頭痛などがあり、これらの症状は潰瘍性大腸炎とは直接の関係はないと思え るが、身体が病的ではあるが家事や家業を全うしなければならないと言った環境 が精神的肉体的負担になって現れたものだと考えた。
 これらの症状には鍼灸治療は良く奏効すると思われ、これらの症状を軽減させ ることにより本症例の生活の質が大いに向上し、結果的に潰瘍性大腸炎に対する 本症例の持つ治癒力が増大することができるのではないかと考えた。


【informed consent】
 潰瘍性大腸炎という病気はなかなか治りづらいと思われます。 ただし、現在肩凝りや腰痛などがあるようですが、こういう状態には鍼灸治療は 良い効果があります。もしこれらの腰痛や肩凝りが治ったら、もう少し日常の生 活が楽になり、潰瘍性大腸炎に対しても自然治癒力がよく働くようになると思い ます。


【治療】  愁訴の緩解を目的に以下のように治療した。

   第1回  平成6年4月28日
 ステンレス製寸3 1番鍼(40mm16号鍼)を用い、仰臥位にて孔最 曲池 陰陵 泉に5〜10mmほど刺鍼し、2〜3度の軽い雀啄のあとすぐに抜鍼し、腹部の左右腹 結と左右大巨 石門、中カンに10〜20mm ほど刺針し、すぐに抜鍼した。
 背臥位にて天柱 風池 六頚 肩井に5〜10mmほど刺鍼しすぐに抜鍼した。 大杼 心兪は5mmほど下方に向けた斜刺で刺針し、身柱 十七椎は直刺で5mmほど刺針し、 腎兪はやや内側に鍼先を向けた直刺で20mmほど刺針しそれぞれ抜鍼せず10分間置 針した。
 置鍼後、大杼 心兪 身柱 十七椎 腎兪に半米粒大の艾柱による直接 灸を7壮行った。

  第5回(20日目)  平成6年5月18日
 症状に大差はない。耳介結腸区へ円皮鍼を保定した(来院ごとに片側ずつ交互に 保定した)。百会に圧痛があるため、治療後に半米粒大の艾柱で5壮施灸した。

  第10回(39日目) 平成6年6月6日
 排便の回数が減少し、起床時〜正午までで1〜2回/正午〜就寝までで2回(初 診時は起床時〜正午までで3〜5回/正午〜就寝前までで2〜3回)となった。
 このころより、治療後に肩の凝り感や全身の倦怠感などが改善し始める。

  検査
 第10回終了時 平成6年8月8日 41日目

 大腸の粘膜上は黄苔と白苔が多数見られる。
 この黄苔や白苔の下には無数の潰瘍があると思われる。症状は良好になりつつある。    

*血液検査の結果は一括して稿末にあります。


▲ はじめに戻る

 第15回(69日目) 平成6年7月6日
 排便の回数はさらに改善し、起床時〜正午までで1回/正午〜就寝前までで1回 となる。便の状態も改善し、柔らかいものの形がある便になり、まわりにうっすら と血糊のような血液が付着していると言う。


 第20回(104日目)  平成6年8月11日
 便の状態はさらに改善した。夜間就寝中の排便はここ1ヶ月ぐらいない。 倦怠感などはあまり感じなくなり、脈拍は70/分となる。

  検査
第18回終了時 平成6年8月3日 96日目

 視野の中央に深い潰瘍があるが、出血はない。
 黄苔や白苔はなく、好転している。


第53回(574日目)  翌平成7年12月6日
 便の状態など安定したので自然に来院の回数が減り、平成7年は21回しか 治療しておらず、3月 5月 7月 9月 11月などは1回しか来院してい ない。治療も肩こりや腰痛の局所的な治療が主になってきた。

  検査
第34回終了時 平成7年3月8日 358日目

 大腸の粘膜上に潰瘍はみられなくなり、ほとんど正常である。
 K医師の報告でも緩解の状態であるという。 


第55回(611日目)  翌平成8年1月12日
粘血便などの症状が始まる。圧痛は身柱 百会 孔最 気海 陰陵泉 築賓に 見られた。治療は初診時に準じて行った。そのほか気海と中・には寸六1番鍼 (50ミリ16号鍼)にて直刺で30ミリ刺鍼し、築賓は上方に向けた水平に近い斜刺 で5ミリほど刺針し1分間程度保留した。百会は半米粒大の艾柱にて5壮施灸し た。耳介の円皮鍼を再び保定した。

 潰瘍性大腸炎の再発ではなく大腸ガンの発症の心配もあり、病院での検査を受 けるように指示した。

第60回(646日目) 平成8年2月16日
 2月14日にC総合病院へ行き検査を受けてきた。大腸カメラの結果、大腸ガン の心配はなく、潰瘍は肛門より30cmのところに多数発生していたとのこと。気海 に半米粒大の艾柱で30壮ほど施灸した。耳介の円皮鍼は両側に保定した。C総合 病院から薬(ステロイド系座薬 整腸剤 精神安定剤)をもらって服用し始める。

 検査
第58回終了時 平成8年2月14日 644日目

 多数の潰瘍が認められ、その上に白苔が覆う。

▲ はじめに戻る


第75回(735日目) 平成8年5月15日
 薬は3月の半ばころから服用していないが排便の回数、便の状態とも改善しは じめ、起床時〜正午までで1〜2回/正午〜就寝前で0〜2回となる。形がある 便になってきた。

 検査
第84回終了後 平成8年7月3日 786日目

 再発後再び緩解した粘膜の状態。


第97回(1063日目) 平成9年3月25日
  排便の回数は一日に2回ほどあるが、便の状態は正常である。3月5日にC 総合病院へ特定疾患の診療の手続きをしに行き、大腸の内視鏡と血液検査を受け てきた。

 検査
第95回終了時 平成9年3月5日 1043日目

 昨年以降、緩解の状態で現在に至る。

 現在も本症例は再発の予防と健康の増進のため来院し鍼灸治療を受療している。



血液検査成績の推移

       項目

検査日

赤血球数
(/立方mm)
白血球数
(/立方mm)
ヘモグロビン
  (g/dl)
 赤沈
(1時間値)
CRP 血清総蛋白
  (g/dl)
治療開始前約90日  413万  4100  8.3   25mm 陰性 -------
第10回 40日目  428万  6700  9.0  ------  陰性  7.4
第18回 96日目  476万  7000 10.1  18mm 陰性 -------
第34回 358日目  444万  7500 13.3   9mm -----  7.4
第58回 644日目  417万  8600  12.8  4mm 陰性  7.2

 

▲ はじめに戻る

【考察】

 本疾患は大腸の粘膜に現局して発症する炎症性の疾患で、 大腸の粘膜に炎症と潰瘍を形成し、病変は肛門から始まって 次第に盲腸側に広がるという特徴があり、下痢 粘血便 腹 痛 発熱などの症状が現れてしばしば日常生活に支障を来す1)。
 本症例のように内科的症状を訴えて鍼灸院に来院した患者 の場合、鍼灸治療の適応になるかどうかの鑑別が第一となる が、本症例の場合は医療機関での診断が確定している状態で の来院であり、鑑別に際しては特別な注意はなかった。しか し、本疾患は経過中に癌性変化を来す場合があるので現病歴 で特に気をつけたが2)5)、症状はB病院を退院したときと比 べて悪化はしておらず、体重の減少などはなく、午後になる と微熱が出るようだがC総合病院で治療していたころから時 々微熱が出ていたのでようなので問題ないものと思われた。 また筋性防御や反動性疼痛などなく、激しい腹痛や嘔吐など の緊急性のあるいわゆる急性腹症などの所見や症状がなかっ たことから鍼灸治療を開始した。
 本疾患の鍼灸治療であるが、本症例に対して鍼灸治療がど こまで効果があるのかは当初全くの未知であったが、向田や 奥間らの症例もあり3)4)本疾患に対してはなんらかの効果が あると思われた。また、C総合病院から処方された薬も医師 と相談の上で服用していないにもかかわらず、制限はあるが 日常の生活が可能であることから鍼灸治療の適応になると判 断した。
 鍼灸治療の治療原理は、生体の自然治癒力を賦活するとこ ろにあり、鍼灸の治療技術は生体の反応を強制的に操作する ものではなく、生体の主体性(自然治癒力)に任せるといっ たソフトなアプロ−チである。病的な状態においては、生体 の主体性である自然治癒力の発動が起きにくく7)、本症例に は潰瘍性大腸炎による頻回の粘血便 昜疲労感 倦怠感など の主訴があり、このようの病的な状態に耐えて家事 家業を 全うしなければならないという生活状況のため精神的肉体的 負担は大きく、肩こりや腰痛、頭痛などの身体の症状に現れ たものと思われ、これによって自然治癒力の発動が起きにく くなっているものと思われた。
 これらの不調を鍼灸治療によって軽快させることができれ ば(生活の質 quality of lifeの向上によって) 本症例の持 つ自然治癒力が良く働くのではないかと考えた。
 鍼灸治療開始後第10回、平成6年6月6日ごろから肩の 凝り感や全身の倦怠感などが改善し始め、現在は治療後に全 身の爽快感を感じるようになり、しばらくの間(1週間から 10日間ぐらい)特に調子よく日常の生活が送れるという。 このような体調の変化が本疾患に対し自然な治癒力の発動を 賦活したものと推察する。
 本疾患の日本人の推定患者数は約2万人で、人口10万人 当たりの有病率は18である。男女の性別による発症率はほ ぼ1:1であり、この病気による死亡率は約2.7 %で、ほと んどが激症または重症の全大腸型の潰瘍性大腸炎である1)。 発症の原因は、感染説(ウイルス 細菌 原虫 真菌など)、 アレルギ−説、自律神経説、膠原病説、内分泌異常説など主 張されているがいまだに決定を見ていない2)。

 本疾患は病変の範囲や経過、症状の程度にて以下のように 分類される1)。その全体に対する割合を記す。
   病変の範囲による分類
  1)直腸炎型       (29.0%)
  2)左側大腸炎型    (31.9%)
  3)全大腸炎型     (37.9%)
  4)その他        (1.2 %)

   経過による分類
  1)再燃緩解型     (71.3%)
  2)慢性持続型     (8.4 %)
  3)初回発作型     (18.4%)
  4)急性電撃型     (1.4 %)
  5)その他        (0.5 %)

   症状による分類
  1)軽症         (46.4%)
  2)中等症       (35.5%)
  3)重症         (14.8%)
  4)激症         (1.7 %)
  5)その他       (1.7 %)

▲ はじめに戻る

 本症例は上記の分類で、C総合病院の本症例の主治医である K医師によると、(直腸炎型/慢性持続型/重症/活動期 平成 6年6月当時)であった。

 初発した昭和62年当時はA病院に入院し、ステロイド剤など による内科的治療で短期間に緩解したが、再発し再び平成3年 にA総合病院に入院し、同様の治療を受けたものと思われたが 全く効果がみられず、3度目の入院となったB病院では平成6 年1月ごろより約30日間絶食し中心静脈栄養法(IVH)に よる高単位の点滴を行って大腸内の安静を計ったが、直接の効 果があまり見られなかったという。
 現代医学による治療は副腎皮質ホルモン剤(プレドニンやリ ンデロンなど)やサラゾピリンなど、抗炎症作用・抗免疫作用 のある薬剤での内科的治療が中心で、全体の70〜80%のものに 適応がある6)。これらの薬剤による治療にて効果のない難治の 場合や、大量出血を伴ったり腸穿孔や重症発作のある重症の場 合、大腸癌の合併がある場合などは外科的に病変部位を切除す る観血的手術の適応になり、全体のうち14.7%程度存在する。

   手術の適応になったものの分類と割合を記す6)。
  1) 難治    (65%)
  2) 重症    (28%)
  3)大腸癌の合併 (7% )

 本症例も難治で内科的治療に頑固な抵抗を示し、手術の適応 になるのではないかと思われたが、主治医のK医師によると手 術して罹患部位を切除してもまた再発する症例も多いとのこと で、手術の選択はしなかったものと思われる。
 向田の症例では、全結腸型 重症と診断された症例で足五里  足三里 伏兎上方5cmの部位の置鍼と下腹部 仙骨部の箱灸 を約2週間に渡って毎日行うことによって好成績を得て、これ によってIVHを行わなくとも済んだ3)。
 奥間らの症例では、中等症で入院歴が5年間に渡って5回あ る再燃緩解型の症例に対し、体表の圧痛として得られた水分  石門 三陰交 志室に半米粒大の艾柱で5日続けて3壮施灸 し、2日施灸を休むといった治療法を2年近く行った結果、暫 時全身状態の好転と便の状態の安定が得られている4)。
 本症例の当院初診時は、制限はあるものの一応の日常生活が 可能であったが、粘血便が一日に5〜6回もあること,微熱や 貧血などの全身症状があることや、K医師の診断により重症の 潰瘍性大腸炎であったと思われた。治療は圧痛の検出された経 穴に対して鍼灸を行ったが一定の効果が見られたと思われ、第 20回平成6年8月11日には主訴の頻発する粘血便がほぼ緩解 している。
 平成6年4月28日より鍼灸治療を開始し、翌平成7年3月8 日までの間は治療の回数(治療回数34回 8.6日に1回治療 )は十 分であったと思われ、ヘモグロビン 白血球数赤血球数 赤沈 値などの血液検査所見(表1)や大腸の内視鏡写真、本症例の 自覚症状の好転などから順調な経過を得られたものと推察され た。しかし長期の治療になったためか緩解期に入った平成7年 3月から治療の回数が大幅に減り、治療の間隔が平均17.4日に 1回治療(平成7年3月8日〜平成8年1月12日 331日 19回 )に開 いてしまい。第55回平成8年1月12日より症状の再燃がおきる。
 再燃後は、約1ヶ月間C総合病院の薬(ステロイド系座薬  整腸剤 精神安定剤ほか)を服用して鍼灸治療も一部治療 法の変更を行い、平均6.2 日に1回(平成8年1月12日〜平成8 年7月6日 176日28回)の頻度で治療を行った結果、平成8年7 月6日には症状が好転し、第88回平成8年9月12日には緩解 の状態に戻ることができた。

 本症例はB病院やC総合病院において十分なinfomed consen t にもとずく医療を受けており、これにより自分の病気につい て良く理解し、主治医との良好な信頼関係を持っていたことに より精神的な安定を保持し、特に症状の再燃後の病状の経過に 良い影響があったものと思われ、本疾患に鍼灸治療の適応があ ったとしても、当院においての鍼灸治療だけではこのような良 好な経過は無かったものと推察され、本症例と主治医の強い信 頼関係について見習うべき点が多い事を感じる。
 また症状の再燃について、緩解後の治療回数の減少がなけれ ば平成8年1月の悪化はなかったかも知れず、今後はこのよう な難治の疾患の症例に対する予後の推定や指導について、特に 慎重な対応が必要であろうと思われた。


【結語】

 本症例に対して平成6年4月28日より平成9年3月25日まで 1063日間97回鍼灸治療を行い、途中で症状の再燃を来したがお おむね良好な結果が得られた。本症例や向田、奥間らの症例に より本疾患に対し鍼灸治療は一定の効果があるように思われる。
 また、本症例に対して行った鍼灸治療では印象的には耳介部 結腸区の円皮鍼と気海の施灸が効果があるように思われ、今後 も本症例を含め本疾患に対しての追試を行いたい。

▲ はじめに戻る



 謝辞…稿を終えるにあたり、本症例の主治医である済 生会福島総合病院内科の栗原陽一医師に、詳細な資料の提供な ど本稿を執筆する上で大変お世話になりました。この場を借り て厚くお礼申し上げます。




【参考文献】

(1)福富 尉ほか:「潰瘍性大腸炎とは」 炎症性腸疾患のホ−ムペ−ジ
http://guedu.cc.gifu-u.ac.jp/~fukutomi/IBD.html   1997

(2)秋谷 忍ほか:「潰瘍性大腸炎」 南山堂 医学大辞典第16版 P274 〜 275 南山堂 1978

(3)向田 宏:「鍼灸を開始してから改善し始めた潰瘍生大腸炎」
医道の日本 594号 P11〜15 医道の日本社 1994

(4)奥間 武ほか:「筑波大学理療科診療録 19 潰瘍性大腸炎の灸」
医道の日本 577号 P11〜15 医道の日本社 1992

(5)小平 進:「大腸がん」 今日の健康 1995 2 月号 日本放送出版協会 1995

(6)高添正和ほか:「潰瘍性大腸炎の外科治療」 IBD NEWS vol.2
http://www.jah.or.jp/~jfcc/IBDN2.html  1997

(7)矢野 忠:「W人に優しい鍼灸医学」 全日本鍼灸学会雑誌 45巻4号
P228(4) 全日本鍼灸学会 ISSN O285-9955 1995


経穴の位置
       十七椎:第5腰椎棘突起と仙骨底間の圧痛点
       六 頚:後頸部第6頚椎の高さで僧帽筋の外縁にある圧痛点